2024/06/20
管理栄養士が知っておきたい令和6年診療報酬改定の内容
令和6年は診療報酬改定の年です。
6月1日より施行されました。
今回は、その中でも、管理栄養士が関連する部分を抜粋してまとめました。
簡潔にご紹介するため、詳しい算定要件や施行基準は省略しています。
※別途関係省庁(厚生労働省)のホームページより原文をご確認ください。
目次▷▷
- 外来・在宅ベースアップ評価料
- 入院ベースアップ評価料
- 入院基本料等の見直し(栄養管理体制の基準の明確化)
- 「包括医療病棟入院料」および「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」の新設について
- 入退院支援加算1・2の見直しについて
- リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の新設について
- 経腸栄養管理加算の新設について
- 栄養情報連携科の新設について
- 回復期リハビリテーション病棟入院料1の見直しについて
- 入院時食事療養費の見直しについて
- 小児個別栄養食事管理加算の新設について
- 生活習慣病に係る医学管理料の見直しについて
- 慢性腎臓病透析予防指導管理料の新設について
- 介護障害連携加算の算定要件に訪問栄養食事指導に関する実績の追加
- 在宅療養支援診療所・病院における訪問栄養食事指導の推進
外来・在宅ベースアップ評価料
外来・在宅医療を実施している医療機関に勤務する管理栄養士を含めた
医療関係職種の賃金改善を
実施している場合の評価が新設されました。
医療従事者の賃上げを目的としています。
これにより、医療従事者の人材確保や医療サービスの質の向上が期待されます。
入院ベースアップ評価料
病院又は有床診療所において、勤務する管理栄養士を含めた医療関係職種の賃金改善を実施している場合の評価が新設されました。
医療従事者の賃上げを目的としています。
これにより、医療従事者の人材確保や医療サービスの質の向上が期待されます。
入院基本料等の見直し(栄養管理体制の基準の明確化)
今回の診療報酬改定では、「退院後の生活を見据え、入院患者の栄養管理体制を充実させる」という観点から、入院基本料等の見直しが行われ、栄養管理体制の基準が明確化されました。
↓追加された内容は青線部分で示されています。
施設基準補足の「5 栄養管理体制の基準」 (2)管理栄養士をはじめとして、医師、看護師、その他の医療従事者が共同して栄養管理を行う体制を整備し、あらかじめ栄養管理手順(標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価、栄養管理計画、退院時を含む定期的な評価等)を作成すること。 |
この変更により、管理栄養士は、他の医療従事者と連携して、患者の栄養管理をより効果的に行うことが求められます。
標準的な栄養スクリーニングを実施し、栄養状態を評価し、計画を立て、退院時も含めた評価を定期的に行うことが重要です。
「包括医療病棟入院料」および「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」の新設について
地域包括医療病棟入院料が新設され、専任の常勤の管理栄養士の病棟配置を求めるとともに、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算が新設されました。
・地域包括医療病棟入院料(1日につき)3050点
・リハビリテーション・栄養・口腔連携加算(1日につき)80 点
この改定の目的は、地域で救急患者などを受け入れ、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰などの機能を包括的に担う病棟の評価を行うことです。
これらの新設は、患者の包括的なケアを推進し、地域における医療サービスの質を向上させるための重要な取り組みです。
特に、栄養管理に専任の管理栄養士を配置することや、リハビリテーション、栄養管理、口腔管理を連携して行う体制を整備することが強調されています。
これにより、患者の健康状態の維持・改善が期待されます。
入退院支援加算1・2の見直しについて
入退院支援加算が見直されました。
この見直しでは、退院支援計画の内容にリハビリテーション、栄養管理、および口腔管理を含めることが明記されました。
具体的には、入院中に必要な療養支援の内容や、栄養サポートチーム等の多職種チームとの役割分担を計画に盛り込むことが求められます。
これにより、管理栄養士を含む多職種チームが協力して、退院支援計画を早期に作成し、患者の退院後の生活に配慮した支援を強化することが重要となります。
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の新設について
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(1日につき120点)が新設されました。
この加算は、入院した患者全員に対して、入院後48時間以内にADL(活動能力)、栄養状態、および口腔状態の評価を行い、それに基づいたリハビリテーション、栄養管理、口腔管理の計画を作成し、多職種が協力して取り組む体制を確保することを目的としています。
この取り組みには、土曜日、日曜日、祝日に行うリハビリテーションも含まれます。
この加算の新設により、管理栄養士を含む多職種が協力し、患者の栄養状態やリハビリテーションの必要性を迅速かつ効果的に評価し、計画を立てることで、患者の早期回復を支援することが求められます。
経腸栄養管理加算の新設について
経腸栄養管理加算(1日につき300点)が新設されました。
この加算は、療養病棟に入院中の患者に対し、静脈経腸栄養のガイドラインに基づいた栄養管理について説明を行い、新たに経腸栄養を開始した場合に適用されます。
この新設された経腸栄養管理加算により、適切な栄養管理の実施と管理栄養士による支援が強化され、患者の回復と健康維持に寄与することが期待されています。
栄養情報連携料の新設について
栄養情報提供加算が廃止され、栄養情報連携料(70点)が新設されました。
この栄養情報連携料の新設は、医療と介護における栄養情報の連携を推進し、入院栄養食事指導料における栄養情報提供加算の名称、要件、評価の見直しをしています。
入院栄養食事指導料を算定した患者に加え、退院先が他の医療機関や介護保険施設等の患者について、退院先の施設の管理栄養士と連携の上、情報共有した場合も算定可能となりました。
この新設された栄養情報連携料により、患者の退院後の栄養管理が他の医療機関や介護施設と連携してスムーズに行われることが促進されます。
回復期リハビリテーション病棟入院料1の見直しについて
回復期リハビリテーション病棟入院料1の見直しでは、
入退院時の栄養状態評価にGLIM基準を使用することが要件化されました。
また回復期リハビリテーション病棟入院料2から5においても
GLIM基準の使用が望ましいとされています。
これにより、栄養管理における評価の質と一貫性が向上し、
患者の健康回復に寄与することが期待されます。
入院時食事療養費の見直しについて
入院時の食費の基準が見直され、以下の通り改定されました。
-
入院時食事療養(Ⅰ)(1食につき)
-
一般的な食事療養
-
- 現行: 640円
- 改定後: 670円
-
流動食のみを提供する場合
-
- 現行: 575円
- 改定後: 605円
-
入院時食事療養(Ⅱ)(1食につき)
-
一般的な食事療養
-
- 現行: 506円
- 改定後: 536円
- 流動食のみを提供する場合
-
- 現行: 460円
- 改定後: 490円
自己負担額は、以下のように改定されます。
-
一般所得者の場合
-
- 現行: 460円
- 改定後: 490円
-
住民税非課税世帯の場合
-
- 現行: 210円
- 改定後: 230円
-
住民税非課税かつ所得が一定基準に満たない70歳以上の場合
-
- 現行: 100円
- 改定後: 110円
この改定は、食材費等の高騰を考慮し、入院時の患者の食事費用を適切に見直したものです。
それに伴い、自己負担額も一部調整されています。
小児個別栄養食事管理加算の新設について
小児に対する適切な緩和ケアの提供を推進するため、「小児緩和ケア診療加算」が新設され、これにより「小児個別栄養食事管理加算」も新たに設けられました。
・小児緩和ケア診療加算 700点
・小児個別栄養食事管理加算 70点
緩和ケアを要する15歳未満の小児に対して、緩和ケアに係る必要な栄養食事管理を行った場合には、小児個別栄養食事管理加算が適応されます。
この加算の新設により、小児患者への個別栄養管理がより適切に評価され、緩和ケアの質が向上することが期待されます。
生活習慣病に係る医学管理料の見直しについて
生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進するため、生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料の要件および評価が見直されました。
具体的な内容
- 生活習慣病管理料の名称を「生活習慣病管理料(Ⅰ)」とし評価および要件の見直し
- 検査等を包括しない生活習慣病管理料(Ⅱ)の新設
- 特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である、糖尿病、脂質異常症及び高血圧を除隊する
- 質の高い疾病管理の推進から、特定疾患療養管理料の対象疾患を追加する。
この見直しにより、生活習慣病に対する管理がより質の高いものとなり、患者の治療計画や管理が効率的に行われることが期待されます。
慢性腎臓病透析予防指導管理料の新設について
管理栄養士を含む透析予防診療チームによる慢性腎臓病患者への指導の評価が新設されました。
慢性腎臓病の患者に対して、透析予防を目的とした指導管理を実施することで、患者の透析への移行を予防することを目指しています。
慢性腎臓病透析予防指導管理料
-
- 初回の指導管理から1年以内の場合: 300点
- 初回の指導管理から1年を超えた場合: 250点
この新設により、慢性腎臓病の患者が適切な指導を受けることで、透析への移行を効果的に防ぐことが期待されています。
介護障害連携加算の算定要件に訪問栄養食事指導に関する実績の追加
介護障害連携加算の実績要件の選択肢に、訪問栄養食事指導に関する実績が追加されました。
地域包括ケアシステムの機能を強化するため、有床診療所が医療・介護・障害サービスとの連携を推進することを目的としています。
この見直しにより、有床診療所が地域における包括的なケアを提供するための連携体制が強化され、地域包括ケアシステムの中でより効果的な役割を果たすことが期待されています。
訪問栄養食事指導は、在宅患者の栄養状態を維持・改善するために重要な役割を果たし、医療・介護・障害サービスの連携を通じて、患者のQOL(生活の質)を向上させることが狙いです。
在宅療養支援診療所・病院における訪問栄養食事指導の推進
在宅療養支援診療所および在宅療養支援病院における訪問栄養食事指導の推進を図る観点から、これらの施設基準が見直されました。
医師が栄養管理の必要性を認めた患者に対して訪問栄養食事指導を行うことが可能な体制の整備を推進されます。
これにより、在宅患者に対する栄養管理の質を向上させ、より適切な在宅療養支援を提供することを目指します。
この見直しは、在宅療養支援診療所および在宅療養支援病院における訪問栄養食事指導の実施体制を整備し、患者に対する栄養管理の質を向上させるための重要な取り組みとなります。
*
*
*
以上、令和6年診療報酬改定の管理栄養士が関連する内容でした。
詳細については、厚生労働省ホームページをご確認ください。
筆者のプロフィール
株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の正社員勤務11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年、管理職6年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。