2024/06/18
管理栄養士による栄養指導とは?病院での実践経験から得た知見
管理栄養士の重要な仕事の一つに「栄養指導」があります。
栄養指導では、個々の体質やライフスタイルに合わせた食事内容を提案し、健康をサポートします。
この記事では、管理栄養士がどのようにして栄養指導を行っているか、その具体的な方法や内容などについて、経験談を中心にご紹介します。
今後栄養指導をやってみたいと思っており興味がある方、実際に現在栄養指導を行っている方にも参考にしていただければと思います。
(目次)
栄養指導はどこで行っているのか?
病院、クリニック、学校、地域の保健センターなど、さまざまな場所で行われています。
今回は、筆者が経験した病院やクリニックの栄養指導に絞りご紹介します。
誰を対象に行っているか?
病院やクリニックでの栄養指導は、患者様やその家族を対象に行われています。
*-----経験談-----*
患者様本人に対して行うことが多いですが、男性の方が対象の時は、食事を作っている患者様の奥様に栄養指導を行うこともとても多かったです。
栄養指導の依頼の流れ
栄養指導は、医師の指示に基づいて行われます。
医師が患者様の健康状態や治療計画を考慮し、管理栄養士に特定の栄養ニーズや目標を指示します。
*-----経験談-----*
入院患者様が対象の場合は、患者様の入院中に指導をお願いされることが多かったです。
ご家族が栄養指導に参加される場合は、ご家族のご都合に合わせて日時を決定して行います。
クリニックでは、事前に栄養指導予約が入る場合もありますが、電話がかかってきて「今から栄養指導に来て」と言われることが多かったです。
急な栄養指導が入ったときは事前準備ができないので、新人の頃はとても緊張しながら指導室に向かっていました。
医師からは栄養指導の指示書がもらえるので、その内容に合わせて栄養指導を行います。
実際に患者様と対面する前に、カルテから患者様の情報を収集し確認をしておきます。
例えば、既往歴、指導内容の疾患、身長、体重、家族構成、など食事に関係することは漏れなく把握します。
また、説明に使える資料などをピックアップしておきます。
栄養指導の流れ
①問題の特定と評価
初回の栄養指導の場合は、現在の栄養状態や健康上の懸念点を把握することが重要です。
健康状態や病歴、食事習慣、身体活動レベルなどを詳しくヒアリングします。
②栄養療法の説明
医師の指示に基づき、病気や状態に応じた適切な栄養療法を説明します。
栄養不良や栄養バランスの崩れが症状を悪化させる場合、特定の栄養素の制限や増加が必要な場合があります。
患者様にとって適切な食品や栄養素の摂取方法について指導します。
③食生活の改善ポイントの提示
改善すべき点や健康への影響を説明します。
バランスのとれた食事、適切な食事のタイミング、水分摂取量、適切なエネルギー摂取量など、食生活の改善ポイントを示します。
*-----経験談-----*
すべての患者様に同じ内容を伝えるのではなく、個々に合わせた指導内容が大切です。
普段から料理をされていて食事に関心の強い方であれば、丁寧な栄養指導も聞いてもらいやすいです。
しかし料理は全くせず、外食や買ったもので食事を済ましてしまう方であれば、その際の料理の選び方などできる範囲の内容を提案します。
また、患者様がどれくらい食事の改善意欲を持っているかも探りつつ、改善ポイントを提案していくことも大切です。
改善ポイントがたくさんある場合、すべてをいっきに伝えてしまうと「できない」と1つも改善に繋げてもらえない可能性があります。
できそうな目標を患者様と一緒に設定し、少しずつ改善していくということも必要です。
新人のときは、「あれも言わなきゃ、これも言わなきゃ」とたくさんのことを伝え、一方的な栄養指導になってしまうことが多くありました。
伝えることが大切なのではなく、患者様の食生活が良くなるように導けることが管理栄養士の役割です。
患者様をよく観察し、寄り添った提案を心がけることが患者様にとっても良い栄養指導となると思います。
実際の栄養指導の経験談
ここでは、筆者が実際に経験した栄養指導の成功と失敗についてご紹介します。
*-----成功話----*
透析室の栄養指導のお話です。
「カリウム」の値が高い女性の患者様でした。
栄養指導に入りお話を伺うと、「カリウムはいつも気を付けている。それなのにいつも値が高いの」と本人もとても悩んでいる様子でした。
食事内容についても聞いても、そんなに悪いところは見つからず、カリウムが高い果物なども一切とっていなかったため、「野菜からのカリウム摂取量が多いのかもしれないな」という印象でした。
後日、野菜のカリウム含有量を調べ、多い・普通・少ないがパッと見て分かる一覧の表にしてお渡ししました。
似たような既成パンフレットはありましたが、情報が多く見づらい部分があったのでシンプルなものを自作しました。
お渡しすると「ありがとう、こんな紙が欲しかったの」と喜んでもらえました。
その後、この患者様は次の検査値で、カリウムが下がりすぎといわれるくらい減っていました。
お話を伺うと、「もらった表を見て、カリウムが少ない野菜しか食べなかった」とのことでした。
少しカリウム値下がりすぎていたため、カリウム量が普通の野菜も取り入れ、カリウムが多い野菜もたまには摂ってもいいことを伝えました。
栄養指導の影響が、自分が思っていたよりも大きかったことに驚いた事例でした。
透析室の患者様は経験が長く、栄養士よりも知識が多い方もたくさんいらっしゃいます。
それでも伝えられること、力になれることはあるんだな、ととても嬉しく感じたことを今でも覚えています。
*-----失敗話----*
こちらも透析室の栄養指導でのお話です。
まだ透析室に入ったばかりの頃でした。
順番に患者様のところを回っていると、「いちご、何個食べてもいいの?」と高齢の女性から聞かれました。
私はこのとき、どう答えていいのか分からず頭が真っ白になり、なんと答えたかも覚えていません。
単純な質問でしたが、透析室に入りたての頃はうまく対応することができませんでした。
何が難しかったかというと、苺の食べ過ぎで影響があるのは「カリウム」値です。
通常の透析患者様の1日のカリウム摂取量の目安は2000㎎ということは知っていましたが、
その内どれくらいを苺からとっていいのかが分かりませんでした。
また、苺の1粒の重さが分からなかったので何粒と答えることができませんでした。
このとき自分の知識不足を痛感したことを覚えています。
ただ、すぐには答えることができなくても、後日調べてお伝えすると、患者様は喜んでくれることが多いです。
失敗を繰り返し、学んでいくことが大切ですね。
以上、管理栄養士が行う栄養指導について経験談を踏まえてのご紹介でした。
栄養指導は、一人ひとりの健康に直結する重要な仕事です。
この記事では、私たち管理栄養士がどのように栄養指導を行っているか、その具体的な方法や経験談をご紹介しました。
今後栄養指導をやってみたいと思っている方、実際に現在栄養指導を行っている方にも参考にしていただければ嬉しいです。
※指導方法や内容は、各病院によって異なることも多いので、一例として参考にしてください。
筆者のプロフィール
株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の正社員勤務11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年、管理職6年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。
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