2025/09/01投稿者:スタッフ

セミナーレポート「免疫で未来を変える食生活で引き出す免疫力」

セミナー概要

令和7年8月28日(木)に開催された『免疫で未来を変える食生活で引き出す免疫力〜未病領域からがんまで〜』セミナーにオンラインで参加しました。

 

このセミナーは、女子栄養大学出版部が主催するセミナーで、免疫を高める生活・食事の工夫や関連する栄養の重要性、最新の研究情報を紹介し、日々の業務に役立てることを目的として行われました。

 

プログラムは以下の通り。

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講演1 『ADLとQOL維持・向上のための食生活を考える』

   講師:社会医療法人近森会近森病院 臨床栄養部 部長 宮島 功 氏

 

講演2 『〜免疫の活性化がカギ〜乳酸菌による疾病予防と癌治療への可能性』

     順天堂大学大学院 医学研究科 研究基盤センター 

     講師:細胞機能研究室 准教授 竹田 和由 氏

 

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ADLとQOL維持・向上のための食生活を考える

生活習慣病とメタボリックシンドローム

■ 生活習慣病とは

生活習慣病とは、食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒などの生活習慣の乱れによって発症する疾患であり、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患(心筋梗塞・狭心症)などが含まれます。これらはがんや歯周病などとも関連し、主要な死因につながることから注意が必要です。

 

■ メタボリックドミノ

生活習慣病が連鎖的に進行し、やがて命にかかわる疾患に至る状態を「メタボリックドミノ」と呼びます。このドミノを倒さないためには、食べ過ぎ・飲みすぎ・運動不足といった習慣の是正が不可欠です。

 

■ メタボリックシンドロームの定義

以下の条件のうち、腹囲(内臓脂肪型肥満:男性85cm以上・女性90cm以上)に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2項目以上を満たす場合、メタボリックシンドロームと診断されます。

日本人の該当率は、男性51.5%・女性20.3%と高く、予防の必要性が高い状況です。

 

食生活指針と食生活の是正

■食生活指針(引用:食生活指針について|農林水産省

  • 食事を楽しみましょう。
  • 1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。
  • 適度な運動とバランスの良い食事で、適性体重の維持を。
  • 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
  • ご飯などの穀類をしっかりと。
  • 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。
  • 食塩は控えめに、脂質は質と量を考えて。
  • 日本の食文化や地域の産物を生かし、郷土の味の継承を。
  • 食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。
  • 「食」に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。

 

→いずれも簡単に取り組める内容ばかり。

 

我が国の生活習慣の現状

■ 栄養・運動の現状(国民健康・栄養調査 令和5年)

  • 肥満率:男性30%、女性20%。特に60歳代で最も高い傾向。
  • 糖尿病の疑い:加齢とともに増加。
  • 食塩摂取量:平均9~10gで、目標値7gを大きく上回る。ここ10年間で改善が見られない。
    ⇨食塩摂取源:しょうゆ(20%)、漬物(10%)、外食・干物なども大きな要因。
  • 野菜摂取量:目標値350gに対し、すべての世代で不足。年々減少傾向。
  • 運動習慣:65歳以上で習慣率は上がるが、歩数は年齢とともに減少。

 

■我が国の生活習慣の現状(小括)

  • 男女ともに食塩摂取量が多く、10年間増減がない
  • 野菜摂取量が少なく減少傾向、目標達成率は20~30%
  • 運動習慣者の割合は若年者で低く、高齢者では歩数が少ない

 

食習慣改善の意思

■ 行動変容の必要性

食べ過ぎ・飲みすぎ・運動不足・肥満といった生活習慣を改善するには、個人の行動変容が不可欠です。これを促すためには、栄養教育や栄養指導といった専門的支援が重要です。

 

■ 改善が難しい理由

改善できない理由として、以下のような回答が見られました。

  • 「特にない」が最多
  • 仕事が忙しい・時間がない
  • 外食が多い
  • 経済的余裕がない
  • 食事の準備が面倒 など

 

■ 関心の低さが課題

  • 肥満者の約55%が改善に消極的
  • 食塩摂取過剰者のうち、約8割が改善に関心がない
  • 全体として、生活習慣の改善に対する意識が低い現状が浮き彫りになりました。

 

フレイルとは?加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下に

■ フレイルと低栄養

「フレイル」とは、加齢に伴い心身の機能や予備能力が低下した状態を指します。高齢者では、栄養状態の維持が重要であり、骨格筋は「栄養の貯金」とも言われます。

 

■ やせのリスク

若年層では問題とされないBMIでも、65歳以上ではBMI20.5以下がリスクとなり、死亡率の上昇につながることが分かっています。

やせの方のうち、約48%が改善の意思がないと回答。やせは肥満よりも見逃されがちですが、死亡リスクは1.6~1.8倍になるとされ、深刻な課題です。

 

■ 栄養支援の重要性

高齢者には、エネルギーとたんぱく質の十分な摂取が重要です。栄養支援において、栄養学的問題点のシフトチェンジの視点が必要になります。目の前の方がいま、何が問題なのか?を判断すること。若年層は生活習慣病予防が中心となりますが、高齢者にはフレイル予防・体重減少予防の視点が欠かせません。

 

 

まとめ

  • 生活習慣病はさまざまな病気の引き金となるため、早期の予防・改善が必要です。
  • 日本人の多くが生活習慣改善に対して関心が低く、行動変容が進んでいません。
  • 食塩や野菜の摂取、運動不足など、明確な課題が山積しています。
  • 栄養教育・支援を通じて、一人ひとりの生活背景や年代に応じたアプローチが求められます。

 

 

〜免疫の活性化がカギ〜乳酸菌による疾病予防と癌治療への可能性

免疫の役割と性質

免疫の本来の役割は、病気を治すことではなく、自分以外の異物を排除することにあります。その結果として、病気が治ることもあるという位置づけです。免疫は非常に選別が厳しく、誤作動が起こると健康を害することもあります(例:アレルギー、花粉症、アトピーなど)。

 

免疫の働きには以下の2種類があります。

  • 自然免疫:生まれつき備わっている免疫。生活習慣や食生活の改善により活性化が可能。病気になりにくい体づくりに貢献。
  • 獲得免疫:病原体との接触やワクチン接種によって得られる免疫。記憶機能があり、同じ病気に二度かかりにくくなる。

 

日常的には自然免疫を高めて体調を整え、特定の疾患リスクが高いときにはワクチン接種などで獲得免疫を補うことが重要です。

 

NK細胞と健康

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、自然免疫に属する重要な免疫細胞で、がん細胞や感染細胞を初対面でも即座に排除する「生まれながらの殺し屋」です。

NK細胞の働きを測る指標として「NK活性」があり、これは細胞ががん細胞などを4時間以内にどれだけ殺せるかで評価されます。

 

NK活性が低下すると、がんや感染症にかかりやすくなるため、NK細胞の活性を維持することが疾病予防において重要です。

 

NK活性に影響を与える要因

NK活性は多くの要因によって影響を受けます。

 

低下させる要因

老化、ストレス、飲酒、喫煙、不規則な生活、過密な環境、孤独、入院、死別、精神的ショックなど。

 

運動との関係

運動直後は一時的にNK活性が低下し、その効果は運動時間の約4倍の時間続く。激しい運動よりも、心拍数100程度の軽い運動が望ましいとされています。

 

生活習慣の改善

睡眠や食生活を整え、安定した生活リズムを保つことがNK活性の維持に有効です。

 

食生活とプロバイオティクスの役割

食事によってNK活性を高める方法の一つとして、体に良い食品を増やし、悪影響を及ぼすものを控えることが挙げられます。

 

特に注目されているのが「プロバイオティクス」と呼ばれる有用な生きた微生物の摂取です。これにより腸内環境が改善され、腸の免疫が活性化→全身の免疫活性(NK活性)が向上するとされています。

 

乳酸菌の可能性

中でも、乳酸菌は腸内で免疫を刺激し、NK細胞の活性を高める効果があると注目されています。乳酸菌単独でも免疫を活性化し、異常細胞や病原体に対する防御力を高めるほか、ワクチンとの併用で特定の病原体への防御効果をさらに強化する可能性も示唆されています。

 

特に、「乳酸菌 OLL1073R-1株」は、感染症の予防やがん免疫治療の効果向上への応用が期待されている株です。

 

まとめ:免疫を整える生活とは

免疫を活性化するには、以下のような生活習慣が効果的です。

  • 適度な軽い運動(心拍数100程度まで)
  • ストレスの少ない生活
  • 笑いのある日常
  • プロバイオティクスや乳酸菌など、腸に良い食品の積極的な摂取
  • 明るく前向きな心の持ち方

 

これらを日常生活に取り入れることで、病気にかかりにくい身体をつくり、健康的な毎日を支えることができます。

 

セミナーを受けての感想

「講演1:ADLとQOL維持・向上のための食生活を考える」を通して、栄養指導のあり方を見直す大切さに気づかされました。栄養指導ではつい「正しい情報を伝えること」に重点を置きがちになってしまいますが、まずは相手の関心を引き出すことが大切です。

 

実際に、肥満や塩分過多といった問題があっても、改善の意識がない人が多いことが示されています。こうした人にただ知識を伝えても、行動にはつながりにくいため、興味を持ってもらうアプローチが重要ということが分かりました。

 

また、栄養支援は年齢や状況に応じた対応が必要であることも印象に残りました。若年層では肥満予防が中心ですが、高齢者では「やせ」やフレイルへの対応が求められます。この対応は全く正反対の対応になります。

 

すべての人に同じ方法を当てはめるのではなく、一人ひとりの状態に寄り添い、柔軟にアプローチする姿勢が管理栄養士に求められていると実感しました。

 

 

 

「講演2:〜免疫の活性化がカギ〜乳酸菌による疾病予防と癌治療への可能性」では、免疫の働きと食生活の関係について、改めて理解を深めることができました。

 

免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類がありますが、獲得免疫にも食生活が関係するという点は新たな気づきでした。ワクチンの効果を十分に発揮させるためにも、日々の食習慣を整えることが重要だと感じました。

 

これまで腸内環境を意識した食事にはあまり関心がありませんでしたが、乳酸菌や食物繊維などを積極的に取り入れていきたいと思います。特に、乳酸菌OLL1073R-1株には免疫活性化の効果が期待されており、今後の生活にぜひ取り入れてみたいと感じました。

 

今回の学びを、自分の生活に活かすとともに、周囲にも伝えていけるよう努めていきたいです。

 

**筆者プロフィール**

株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の現場経験11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。