2025/10/24
セミナーレポート「胃食同源のすすめ~健胃生活の最新事情~」
セミナー概要
令和7年10月23日(木)に開催された『胃食同源のすすめ~健胃生活の最新事情~』セミナーにオンラインで参加しました。
このセミナーは、女子栄養大学出版部が主催するセミナーで、
胃の病気や不調に応じた食生活のアドバイスや、
胃の健康維持に役立つと注目されているプロバイオティクスの最新情報など、
基礎知識から最前線の知見までを専門の先生方から学ぶことを目的として行われました。
プログラムは以下の通り。
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〇講演1「加齢とストレスに負けない健胃をつくる食生活」
講師/沖縄大学 健康栄養学部 管理栄養学科 学科長 國本あゆみ 氏
〇講演2「胃で働くプロバイオティクス」
講師/一般社団法人日本プロバイオティクス学会 理事長、
東海大学 医学部 消化器内科 客員教授 古賀康裕 氏
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胃食同源のすすめ~健胃生活の最新事情~
講演1「加齢とストレスに負けない健胃をつくる食生活」
〇加齢に伴う消化管の変化
・下部食道括約筋の収縮力低下、食道の蠕動運動の低下→逆流性食道炎
・胃の弾力性の低下、胃酸の分泌の減少、胃から小腸への蠕動運動の低下→食が細くなる、胃もたれ、膨満感、食欲低下
・ヘリコバクターピロリと加齢によって萎縮性胃炎になる
・胃液の分泌の減少はビタミンB12の吸収低下(悪性貧血)や鉄などのミネラルの吸収低下に繋がる
〇ストレスによる胃への影響
・ストレス負荷→交感神経が活性化→胃の血管が収縮→胃の血流が悪くなる→胃粘液の分泌減少
・ストレス負荷→交感神経が活性化→アセチルコリン分泌→胃酸分泌促進
・ストレスの原因:精神面、過労、睡眠不足、タバコなど
〇健胃をつくる食生活
<胃に負担がかかる食品>(胃が弱っている状態で)
・食物繊維の多い食品:セロリ、ごぼう、たけのこ、きのこ類
→食物繊維は消化できないため、消化に悪い
・脂質の多い食品:バラ肉、ステーキ、洋菓子、揚げ物、ラーメン
→消化に時間がかかるため、胃に負担がかかる
・カフェインを含む食品:コーヒー、紅茶、緑茶
→胃を刺激する。胃酸の分泌を促進。
・アルコール
→多量に摂取すると鼓膜のバリアを壊す
・香辛料:唐辛子、わさび、辛子、こしょう
→多量に摂取すると胃粘膜を刺激し、胃液の分泌を促進
・炭酸飲料
→胃を刺激し、胃液の分泌を促進
・酸味の強い食品
→胃酸の分泌を促進
<胃にやさしい食品>
・胃酸を中和(胃酸の刺激が緩和)する食品:牛乳、ヨーグルト
・食物繊維の少ない食品:うどん、じゃがいも、大根、人参、トマト
・消化の良い食品:卵、白身魚、大根、人参
<胃にやさしい栄養素>
・メチルメチオニンスルホニウムクロリド(MMSC)=キャベジン
作用:胃粘膜の保護、胃潰瘍の予防、胃の血流
食品:キャベツ(芯に多い)、パセリ、レタス、ブロッコリー、セロリ、アスパラガス
・イソチオシアネート
作用:胃粘膜の保護、ピロリ菌に対する殺菌作用
食品:ケール、ブロッコリー、キャベツ
・スルフォラファン
作用:ピロリ菌に対する殺菌作用
食品:ブロッコリースプラウト、ブロッコリー、カリフラワー、菜の花、大根、キャベツ、貝割れ大根
・梅リグナン
作用:ピロリ菌の運動を抑制、死滅させる効果。
食品:梅
・モモルデシン
作用:胃粘膜を保護、胃酸の分泌を促進。
食品:ゴーヤ
・βカロテン
作用:胃粘膜の維持、活性酵素の除去により胃粘膜の損傷を防ぐ
食品:ヨモギ、ハン玉、ツルムラサキ、フダンソウ、高菜、モロヘイヤ、エンサイ、ツルナ、島南瓜
・ポリフェノール
作用:胃粘膜を保護する
食品:ぶどう(アントシアニン)アルコールによって起こる胃の不調を緩和
りんご(プロシアニジン)胃粘膜を保護し、ピロリ菌増殖を抑制する効果
・ぺリルアルデヒド
作用:胃腸の働きを活性化させる。食欲増進
食品:しそ、しゅんぎく
・ショウガオール
作用:胃壁の血行を良くし、胃酸などの消化液の分泌を促す。
食品:しょうが(乾燥、または加熱)
・たんぱく質分解酵素
作用:消化管内でたんぱく質の消化を助ける
食品:キウイ(アクチニジン)
パパイヤ(パパイン)
パイナップル(ブロメライン)
・ジアスターゼ(アミラーゼ)
作用:でんぷんの消化を助ける
食品:大根、山芋、かぶ
・粘性多糖体
作用:胃粘膜の保護
食品:なめこ、ヤマノイモ、さといも
・ガラクタン
作用:胃粘膜の保護
食品:オクラ、里芋
・ペクチン
作用:胃粘膜の保護
食品:オクラ、モロヘイヤ
・LPA(リゾホスファチジン酸)=リン脂質
作用:消化管粘膜維持・修復に効果がある
食品:キャベツ、大根、春の七草
・アリルイソチオシアネート
作用:胃壁の血行を良くし、胃酸などの消化液の分泌を促す
食品:クレソン、わさび、からし
・アリシン
作用:胃腸を刺激して、食欲を増進させる
食品:葉にんにく
<胃にやさしい調理法>
・煮る・蒸す・茹でる:油の使用を抑えられる。脂肪分が落ち、食物繊維が柔らかくなる
・薄味にする:濃い味付けや香辛料などの刺激物を避ける。
<胃に負担のかかる食生活>
・夜食:夜遅い時間に油ものとアルコールをドカ食いすると、胃に負担がかかる
・早食い:よく噛まずに食べると、胃に負担がかかる
・食べ過ぎ:消化に時間がかかり、胃に負担がかかる
〇まとめ:健胃をつくるためには
・胃にやさしい食品を摂る
・暴飲暴食をしない…腹八分目
・規則正しい生活
・ストレスをためない
講演2「胃で働くプロバイオティクス」
1.胃で働くPRO、LG21乳酸菌とは
・LG21の特徴
①胃酸に耐性
②胃粘膜への付着能
③乳酸を多く分泌
・プロバイオティクスの生体への作用
→病原菌の定着増殖の抑制(ピロリ菌などのグラム陰性菌抑制)
→腸粘膜バリアーの強化(胃粘液およびHCO3-の産生増加)
→免疫賦活および調節
2.ピロリ菌時代の胃の病気
①慢性胃炎
②胃十二指腸潰瘍
③胃がん
・ピロリ菌感染による胃粘膜の炎症が胃がん発生の出発点となる
3.ポストピロリ菌時代の胃の病気
①ピロリ菌除菌後胃がん
②機能性ディスペプシア
③胃食道逆流症(逆流性食道炎)
・ピロリ菌除菌後胃がん発生の原因
→ピロリ菌除菌後の胃の多くが、胃粘膜が萎縮し低胃酸状態になっている
→低胃酸状態では、口腔内由来のグラム陰性菌がおおく棲息し、最近由来のLPSが高濃度で存在
→LPSは炎症を惹起し、発がん促進物質となる
⇒LG21乳酸菌は乳酸を分泌することで、低胃酸状態の胃内酸性度を上げ、LPS濃度を顕著に低下さえることで、除菌後の胃がん発症予防に働くと期待される。
・機能性ディスペプシア
→機能性ディスペプシア(FD)とは、ピロリ菌除菌後も続く、胃もたれ、胃痛、食後膨満感の症状のこと
→プロバイオティクスはFD症状を改善する
⇒LG21乳酸菌が胃の負担を和らげるのを助ける
セミナーを受けての感想
今回のセミナーを通して、胃の健康と食事の関係について改めて理解を深めるとともに、プロバイオティクスの有効性について学ぶことができました。
第一講演では、胃に負担をかける食品や胃にやさしい食品について、栄養素レベルで具体的に学ぶことができました。特に、ショウガのように一見刺激が強そうな食品にも、胃壁の血流を促進し消化を助ける成分が含まれていることを知り、非常に印象的でした。今回得た知識を、胃の不調を訴える方への食事指導や献立提案に活かしていきたいと感じました。
第二講演では、LG21乳酸菌が胃がん発症の予防に寄与する可能性があることを知り、身近な食品で病気の予防につながるという点に大きな魅力を感じました。ちょうど私自身も最近ピロリ菌抗体陽性の結果を受け、胃の検査を行ったばかりだったため、個人的にも非常に関心の高い内容でした。現在、ピロリ菌感染者は減少している一方で、除菌後の方は依然多く存在しており、そうした方々にとって今回の情報は非常に有益だと感じました。
今回のセミナーを受講し、腸だけでなく「胃」にも焦点を当てた食事支援の重要性を改めて認識しました。今後は、健胃を意識した食生活の提案や、プロバイオティクスを活用した栄養指導にも積極的に取り組んでいきたいと思います。
株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の現場経験11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。
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