2024/09/24投稿者:スタッフ

セミナーレポート 「2024年度食物アレルギーセミナーin神戸 ~共に創ろう 笑顔あふれる 未来~」

セミナーの概要

令和6年9月23日(月)に開催された
「2024年度食物アレルギーセミナーin神戸~共に創ろう 笑顔あふれる 未来~」
にオンラインで参加しました。

 

このセミナーは、食物アレルギー症状やその対応など、
基礎知識から日々の業務で活かせる対応策を、
第一線で活躍されている先生方から学ぶことが目的です。

 

以下のプログラムが行われました。

1. 基調講演「食物アレルギー家庭と園・学校での対応」
講師: 宇理須厚雄氏(うりすクリニック 名誉院長、藤田医科大学客員教授)

2. 講演「食物アレルギー栄養食事指導のポイント」
講師: 高松伸枝氏(別府大学 教授、学会認定小児アレルギーエデュケーター)

 

1. 基調講演「食物アレルギー家庭と園・学校での対応」

〇食物アレルギー

・木の実アレルギーが増えてきたのが近年の特徴

 

2024年3月28日からアレルギー物質表示が変更になった

 ①くるみが推奨表示から義務表示になった

 ②マカダミアナッツ推奨表示になった

 ③松茸が推奨表示から削除された

 

・原因食品の診断方法には以下の内容がある。

 ①病歴聴取

 ②血液検査

 ③皮膚テスト

 ④経口負荷試験(複数回連続法・単回法)

 

・とくに経口負荷試験の結果から誘発閾値と安全量を決めることが重要

 →運動、入力、胃腸炎、疲れ、生理などのファクターで
  アレルギー症状が出ることがあるので
  1/4の安全係数をかけて安全量を決めている



〇家庭での食物アレルギー治療

・症状が誘発されない食べられる範囲までは食べることを目指す

→必ず医師・栄養士の指導のもとで行う。
 経口負荷試験で安全摂取量を具体的に決める必要がある。

 

・具体的安全量を示さない「少しだけ」食べましょうは危険

 

 

〇園・学校・学童などでの食物アレルギー治療

園・学校は家庭と違い複数の人間が関係するため間違いが起きやすい
できれば複数人による二重チェックが望ましい。

・園・学校は基本的に完全除去で段階的対応はしない。

・極微量でもアレルギー症状出現なら弁当持参の可能性も検討必要。

未接種食品は基本的に除去する。

→未接種なものは提供しない方が良いが、食べていることが実際ある。

 対策:

   ①保護者に献立表を配布しチェックを啓発する

   ②提供される食品、提供されない食品の一覧表を渡す

   ③共通献立メニューを考える

   (卵は固ゆでのみ、アレルギー28品目不使用を使う)

   ④献立にはアレルギー物質がわかりやすくする。

   (ほうれん草のお浸しにごまが入っている場合は「ごま和え」などにする)



〇アレルゲンの強さ

・アレルゲン性の強さが調理加減や形態によって異なる。

・卵のアレルゲンの強さ:生卵>かきたま汁>オムレツ>だし巻き卵>固ゆで卵。

(マヨネーズは生に近い)




2.講演「食物アレルギー栄養食事指導のポイント」

〇食物経口負荷試験に基づいた栄養食事指導

・食物経口摂取負荷試験などによって診断された原因食物は、
必要最小限の除去で食べられる範囲までは摂取する。

 

〇食物アレルギーの栄養指導のポイント

  1. 原因食物を知り、食べられる範囲までは摂取する
  2. 原因食物の除去による栄養素の補充
  3. 食のQOLの維持
  4. 誤食防止
  5. 寛解後の食生活支援

 

〇食物アレルギーによる配慮が必要な栄養素

  1. 多品目除去時の微量栄養素
  2. 牛乳除去時のカルシウム→骨密度に影響し、骨折が起きやすくなる
  3. 魚介類・鶏卵長期除去によるビタミンD
  4. 離乳食の大幅な遅れによる→予防的な除去は推奨されていない

 

〇コンタミネーション

・コンタミの表示は任意なので表示されない加工食品もあることを知っておく

  1. 調理場での混入リスクはゼロではない。気を緩めると頻繁に混入事例が発生する
  2. 使用頻度の高い調理器具は、アレルギー対応食専用にする
  3. 対応食用の揚げ油は新しいものを使用する。難しければ、対応食を先に調理する。
  4. 専用にできない器具は、40℃の次亜塩素酸ナトリウム溶液と弱アルカリ性洗剤の混合溶液に10分つけ置きメラミンスポンジが効果的

 

〇献立の工夫

  1. 原因食物が明確な献立名に(例:ハンバーグ→チーズ入りハンバーグ)
  2. 加工食品は、都度表示チェック
  3. 複数料理に原因食物を使用しない(例:シチューとチーズパン → シチューだけにする)

 

〇調理の工夫

  1. 対応食は最初に調理
  2. 専用の食器、ラップに名前記入で区別
  3. 調理器具はよく洗い、洗浄する

 

〇受け渡し・配膳の工夫

  1. 対象者までの受け渡し・配膳をマニュアル化ダブルチェック化
  2. 献立表と食事は一心同体。カードはトレーに固定
  3. 献立表は転記しない





セミナーを受けての感想

どちらの講演でも、経口負荷試験の実施により安全量を求めることが重要であり、
その結果に基づいて食べられる量を日々摂取していくことが大切だと学びました。

しかし、園や学校では家庭と比べて管理が難しいため、
アレルギー食品の提供を完全に除去する対応が望ましいです。

管理栄養士として、こうした状況をしっかりと理解し、
栄養指導や給食業務に取り組む必要があると感じました。

 

さらに、給食業務においてアレルギー食品を提供しないためには、
家族の協力も不可欠です。

そのため、保護者に対する情報提供や協力依頼の啓発が
必要であることを実感しました。

実際に、私自身にも1歳になる子供がいますが、
これまでアレルギー症状がなにもがなかったため、
家で食べたことのない食べ物を、園で食べることのリスクについて
深く考えたことがありませんでした。

しかし、今回の講演を通じて、より一層アレルギーに関して
危機意識を持って対応していく必要があると感じました。

また、私と同じように危機感が低い保護者も少なくないと思います。
そのため給食施設において、栄養士は給食提供だけでなく
情報発信においてもとても重要な役割を担っていることを実感しました。

 

今回のセミナーを通じて、
食物アレルギーと対応方法について理解を深めることができ、
とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。



筆者のプロフィール

株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の正社員勤務11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年、管理職6年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、
その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。