2025/03/05
令和5年の国民健康・栄養調査の結果から管理栄養士が実践したいこと
令和5年11月に実施された国民健康・栄養調査の結果が、令和6年11月に厚生労働省より発表されました。この結果から、現代の日本人の食生活における課題が浮き彫りになっています。
管理栄養士として、これらの結果を受けて、どのように国民の健康を支えるかを考えることが重要です。
そこでこの記事では、令和5年の国民健康・栄養調査の結果をもとに、管理栄養士が実践すべき具体的な取り組みについて解説します。
結論から言うと、管理栄養士は食習慣改善への関心を持つ人がもっと増えるようアプローチしていく必要があります。
日々の栄養指導や健康促進活動にどのように反映させていくかを見つめ直してみましょう。
第2章 栄養・食生活に関する状況
第4章 飲酒・喫煙に関する状況 20
調査結果より分かる日本人の食生活における課題
①肥満の増加
②やせの問題
③高齢者の低栄養傾向
④糖尿病のリスク
⑤食塩摂取量の多さ
⑥野菜摂取量の不足
⑦栄養バランスの欠如
⑧食習慣改善の低い関心
⑨健康な食習慣の妨げ
管理栄養士が実践すべき取り組み
①食生活への関心を高める
②栄養バランスの良い食事を意識させる
③野菜摂取量を増やす
④塩分摂取量を減らす
最後に
調査結果の概要
令和5年の国民健康・栄養調査の調査結果から、食生活に関連する部分のみ抜粋しました。
第1章 身体状況及び糖尿病等に関する状況
1.肥満及びやせの状況
- 肥満者(BMI≧25 kg/m²)の割合:男性31.5%、女性21.1%。過去10年間で、男性は平成25年から令和元年にかけて有意に増加し、その後は変動なし。女性には有意な増減なし。
- やせの者(BMI<18.5 kg/m²)の割合:男性4.4%、女性12.0%。男性は平成25年から令和元年にかけて有意に減少し、その後は変動なし。20〜30代女性は20.2%。
- 65歳以上の高齢者の低栄養傾向(BMI≦20 kg/m²)の割合:男性12.2%、女性22.4%。男女ともに過去10年間で有意な増減なし。85歳以上で最も高い割合。
2.糖尿病に関する状況
- 糖尿病が強く疑われる者の割合:男性16.8%、女性8.9%。過去10年間で男女ともに有意な増減なし。
- 年齢階級別:年齢が上がるにつれて、糖尿病が強く疑われる者の割合が高くなる。
3.血圧に関する状況
- 収縮期血圧の平均値:男性131.6 mmHg、女性126.2 mmHg。令和元年からの推移で男女ともに有意な増減なし。
- 収縮期血圧が140 mmHg以上の者の割合:男性27.5%、女性22.5%。令和元年からの推移で、男性は有意な増減なし、女性は有意に減少。
4.血中コレステロールに関する状況
- 血清総コレステロール値が240 mg/dl以上の者の割合:男性10.1%、女性23.1%。過去10年間で、男性は有意な増減なし、女性は平成28年から令和元年にかけて有意に増加。
- 血清non HDLコレステロール値の平均値:男性139.0 mg/dl、女性143.5 mg/dl。過去10年間で男女ともに有意な増減なし。
第2章 栄養・食生活に関する状況
1.食塩摂取量の状況
- 食塩摂取量の平均値:全体で9.8g、男性10.7g、女性9.1g。過去10年間で男女ともに有意な増減なし。
2.野菜摂取量の状況
- 野菜摂取量の平均値:全体で256.0g、男性262.2g、女性250.6g。過去10年間で、男性は有意に減少、女性は平成27年以降に有意に減少。
- 年齢階級別:男女ともに20代で最も少なく、年齢が高くなるにつれて摂取量が増える。
3.栄養バランスのとれた食事に関する状況
- 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を毎日1日2回以上摂っている者の割合:男性45.7%、女性47.1%。男女ともに70歳以上で最も高い。
- 食習慣改善の意思と食事頻度:主食・主菜・副菜を1日2回以上摂っていない、または週に1日摂るだけの者は、改善に関心がない、または改善するつもりがないという割合が高い。男性で約8割、女性で6割を超えている。
4.食習慣改善の意思
- 食習慣に関する認識:男女ともに「野菜を十分に食べる」「果物を食べる」「食塩の摂取を控える」ことについて、「食習慣に問題はないため改善する必要はない」と回答した者が最も多い。
- 野菜摂取量別の改善意思:1日の野菜摂取量が70g未満の者では、「関心はあるが改善するつもりはない」と回答した者の割合が最も高い。
- 果物摂取量別の改善意思:1日の果物摂取量が0gの者では、「関心はあるが改善するつもりはない」と回答した者の割合が最も高い。
- 食塩摂取量別の改善意思:1日の食塩摂取量が7g以上の者では、「食習慣に問題はないため改善する必要はない」と回答した者の割合が最も高い。
5.健康な食習慣の妨げとなる点
- 健康な食習慣の妨げとなる点:「主食・主菜・副菜を組み合わせて食べる」「野菜を十分に食べる」「果物を食べる」「食塩の摂取を控える」のいずれについても、男女ともに「特にない」と回答した者の割合が最も高い。
第4章 飲酒・喫煙に関する状況
1.飲酒の状況
- 生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合:男性14.1%、女性9.5%。過去10年間で、男性は有意な増減なし、女性は有意に増加。
- 年齢階級別の飲酒割合:
┗男性:40代が最も高く23.6%
┗女性:50代が最も高く14.6%
調査結果より分かる日本人の食生活における課題
調査結果より、日本人の食生活における課題は、以下の9つが挙げられます。
①肥満の増加
男性31.5%、女性21.1%が肥満。特に男性の肥満割合が増加している。
②やせの問題
男性4.4%、女性12.0%がやせ。特に20〜30代の女性でやせの割合が高く、栄養状態が不十分な可能性がある。
③高齢者の低栄養傾向
65歳以上で、特に85歳以上で低栄養傾向が高く、男女ともに高い割合が見られる。
④糖尿病のリスク
糖尿病が強く疑われる者が男性16.8%、女性8.9%。年齢が上がるにつれて割合が増加している。
⑤食塩摂取量の多さ
食塩摂取量の平均は9.8g。男性は10.7g、女性は9.1gであり、推奨量を超えている。
⑥野菜摂取量の不足
野菜摂取量の平均は256.0g、男性262.2g、女性250.6g。特に男性と女性で減少傾向が見られる。
⑦栄養バランスの欠如
主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を毎日2回以上摂取している者は少なく、食事のバランスが不十分な状態。
⑧食習慣改善の低い関心
食習慣に関して「改善する必要はない」と感じている人が多い。特に野菜、果物、食塩摂取の改善への関心が低い。
⑨健康な食習慣の妨げ
健康な食習慣を妨げる要因として「特にない」と答える人が多いが、実際には栄養バランスのとれた食事を避けている。
管理栄養士が実践すべき取り組み
今回の調査結果から、管理栄養士が実践すべき取り組みとして以下の4つが挙げられます。
②栄養バランスの良い食事を意識付ける
③野菜の摂取量を増やす
④塩分の摂取量を減らす
①食生活への関心を高める
まず最初に重要なのは、「食生活への関心を高める」ことです。多くの人が食習慣の改善が必要ないと考えており、この意識を変えることが最も重要です。
そのためには、管理栄養士が「健康的な食生活とは何か」をしっかりと伝え、個々の食生活に対して気づきを促す役割を担うことが求められます。
②栄養バランスの良い食事を意識付ける
栄養バランスの良い食事とは、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせた食事のことですが、実際には毎日2回以上摂取している人が少ないのが現状です。
「改善するつもりがない」と答えた人も多いため、まずは関心を持ってもらえるようなアプローチが必要です。食事の基本的なバランスを意識させることが重要です。
③野菜の摂取量を増やす
野菜摂取量の目標は1日350gですが、実際の平均摂取量は256gにとどまり、約100gの不足があります。また、過去10年間で摂取量は減少傾向にあるため、野菜摂取の重要性を伝え、積極的に野菜を摂る習慣を促進するアプローチが必要です。
日々の食事に野菜をもっと取り入れる意識を高めることが求められます。
④塩分の摂取量を減らす
食塩摂取量の目標は男性7.5g、女性6.5g未満ですが、実際の平均値は9.8gと、かなりオーバーしています。また、過去10年間で増減が見られないことから、塩分摂取の減少に対する認識が低いと考えられます。
塩分を減らすことの重要性を伝え、具体的な減塩方法を提案し、意識を高める取り組みが必要です。
最後に
この記事では、令和5年国民健康・栄養調査の結果と課題について解説しました。
まず重要なのは、食生活への関心を高めることです。
調査では「食習慣に改善の必要はない」と考えている人も多く、改善への関心の低さが浮き彫りになりました。
このため、まずは食生活の重要性と改善の必要性を広め、国民一人ひとりに食生活に対する関心を持ってもらうことが、管理栄養士としての最初の大きなステップです。
そのためには、私たち管理栄養士の一人ひとりが何ができるか考え行動していく必要があります。
株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の現場経験11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年、管理職6年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。
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