2025/11/14
セミナー実施報告:「食品群別荷重平均成分表と食品構成表作成」
セミナー概要
令和7年11月13日(木)、あすてっぷKOBEにて、
一般社団法人 神戸市老人福祉施設連盟 栄養士会主催のセミナーを開催いたしました。
講師は、当社 株式会社メディカルフロンティア 代表取締役 吉田綾子が務めました。
本セミナーでは、献立作成の基本の「食品郡別荷重平均成分表」「食品構成表」への理解深めることを目的とし、27名の福祉施設勤務の管理栄養士さんが参加してくださいました。
以下のプログラムを実施しました。
- 第一部:講義「食品群別加重平均成分表と食品構成表の作成」
- 第二部:ワーク「食品構成表のカスタマイズ」
第一部:講義「食品群別荷重平均成分表と食品構成表の作成」
以下の、献立作成手順に基づき、「食品群別荷重平均栄養成分表」「食品構成表」について解説しました。
<献立作成の手順>
①給与栄養目標量を決める
②食品群別荷重平均栄養成分表を求める★
③食品構成表(食品群別給与目標量)を作成する★
④献立計画を作成する(予定献立表の作成)
⑤栄養出納表を作成する(予定献立と実施献立の差異を確認+各栄養素の栄養比率算出)
⑥評価
第一章:食品群別荷重平均成分表
〇食品群別荷重平均成分表とは?
特定の施設の過去の献立実績に基づき、各食品群に含まれる食品の使用頻度や使用量を重み(荷重)として計算した、100gあたりの平均栄養成分値をまとめた表。
〇食品群別荷重平均成分表を作成する目的
・実態に即した栄養価計算にするため
・食品構成表作成の土台として活用するため
〇食品群別荷重平均成分表の作成に必要なデータ収集
・献立実績データ:過去一定期間の献立で使用した全食品の名称と使用量のデータ
・食品成分データ:日本食品標準成分表のデータ
・食品群の分類:施設で使用する食品群の分類基準を明確にする
〇食品群別荷重平均成分表の作成手順
(1)各食品の使用割合(荷重)の算出
①食品群ごとの総使用量を集計する
→例:肉全体100kg(豚もも肉60kg、鶏むね肉40kg)
②食品群内の各食品の使用割合を算出する
→荷重(%)=特定の食品の使用量/その食品群の使用量
→例:肉類の総使用量100kgのうち、豚もも肉60kgなら荷重60%、鶏むね肉40kgなら荷重40%
(2)荷重をかけた栄養成分値の算出
①各食品の栄養成分値を調べる
→例:豚もも肉(エネルギー119kcal、蛋白18.0g、脂質3.1g…)
②荷重平均を算出する
→例:肉の蛋白質20.82g=豚もも肉(20.5g/100g)×60%+鶏むね肉(21.3g/100g)×40%
(3)表にまとめる
→食品群別、栄養素別に結果を整理し「食品群別荷重平均成分表」として完成させる
〇食品群別荷重平均成分表作成の留意点とポイント
◆データ期間の選定:献立の偏りや季節変動を考慮し、最低3ヶ月、できれば1年間のデータを使用する
◆食品成分表の選択:使用する食品成分表の版を統一して、献立作成・栄養管理の基準として定める
◆汎用性の確認:荷重平均成分表はあくまで「平均」。極端に偏った献立の栄養価計算には、個別の成分値を使用するなどの対応が必要。
◆定期的な見直し:献立内容や使用する食材が大きく変わった場合は、定期的に荷重平均成分表を更新する
第二章:食品構成表
〇食品構成表とは?
給与栄養量を食品群ごとの使用量に置き換えて示した一覧表
〇食品構成表の作成目的とメリット
・給与栄養目標量の達成:献立作成時に栄養価のバラつきを防ぎ、目標量を満たしやすくなる
・食品の偏りの防止:さまざまな食品群をバランス良く使用するための指針となる
・献立作成の効率化:献立の栄養価調整をスムーズに行うための目安となる
・コスト管理の目安:食品群ごとの使用量が明確になることで、食材費の計画にも役立つ
〇食品構成表の作成手順
(1)給与栄養目標量の設定
対象者に応じた給与栄養目標量を設定する
(2)食品群の設定と分類
①使用する食品群を決める
→例:穀類、芋類、豆類、肉類…
②それぞれの食品群の具体的な食品の範囲を明確にする
→例:穀類→ごはん、パン、麺類など
(3)食品群別平均栄養成分表の作成(第一章)
(4)食品群別給与目標量の設定
設定した給与栄養目標量を充足するために、各食品群をどれくらい使用するか、目標量を設定する。
→例:米160g、パン90g、魚50g、肉40g…
(5)栄養価の確認と調整
設定した食品群別使用量に基づいて、総栄養価を計算する
(6)食品構成表の完成と運用
〇食品構成表作成の留意点とポイント
◆施設の実態と整合性:実際の献立の嗜好、食材料の仕入れ状況、調理能力、喫食者の嗜好などを反映させましょう。
◆季節性の考慮:季節の食材の利用計画と矛盾しないか確認する
◆食費とのバランス:設定した食品構成が、予算内の食材料費に収まるか確認する
◆食品成分表の活用:日本食品標準成分表は基礎データとして不可欠。最新版を使用する。
第二部:ワーク「食品構成表のカスタマイズ」
特定の対象者に設定した給与栄養目標量に基づき、主要な食品群の配分を試算しました。
食品群別荷重平均成分表のサンプルデータを用い、以下の栄養目標量に対応する食品構成を作成しました。
- エネルギー:1600kcal
- たんぱく質:60g
- 脂質:37g
- 食塩相当量:6.5g
ワークでは、穀類(米・パン)、魚介類、肉類、卵類、牛乳、油脂類について、各自が実際に分量を検討しながら食品構成の作成に取り組みました。
セミナーの様子
みなさん熱心に講演を聴いてくださり、課題にも一生懸命取り組んでいただきました。
現場での経験年数が浅い方も多く、実際の計算に苦戦される場面もありましたが、講師や周囲と相談しながら着実に理解を深めていく姿が印象的でした。
今回扱った「食品群別荷重平均成分表」や「食品構成表」は、管理栄養士であれば十分に理解しておきたい重要な資料です。
通常業務では年に数回と触れる機会は限られていますが、栄養士業務の基礎を支える大切な部分でもあります。
近年ではパソコンや栄養ソフトの普及により、手作業で作成することはほとんどなくなりました。
だからこそ、このような場で実際に手を動かして取り組んでいただくことで、これまで以上に理解が深まったように感じています。
今回の学びが、みなさんが職場で使用している資料のより深い理解につながることを願っています。
このような機会をご提供できたことを大変うれしく思います。
ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。
株式会社メディカルフロンティア 専属ライター(管理栄養士)
▼管理栄養士の現場経験11年
▼栄養指導3年、調理現場3年、献立作成5年
これまで病院に所属し、主に栄養管理や献立管理を担当してきました。
栄養士コラムは自身の経験も踏まえ、その他、転職や業界情報などみなさんの役に立つ情報発信を行っていきます。
セミナー情報のおすすめ記事
-
2025/11/14
セミナー実施報告:「食品群別荷重平均成分表と食品構成表作成」
-
2024/09/20
セミナーレポート「 ランチ形式で学ぶ在宅での食支援~トリプル改定 医療・介護・在宅のポイント!~」
-
2024/09/24
セミナーレポート 「2024年度食物アレルギーセミナーin神戸 ~共に創ろう 笑顔あふれる 未来~」
-
2024/10/17
セミナーレポート「正しく知ろう!健康食品~健康食品を利用するにあたっての留意点などについて~」

